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SSBJ基準2025:企業が今すべきサステナビリティ情報開示実務

SSBJ基準2025:企業が今すべきサステナビリティ情報開示実務

2025年3月5日、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は日本初の「サステナビリティ開示基準」を公表しました[1]。これにより、従来のCSR報告やTCFD提言だけでなく、財務諸表と同じ企業範囲・同期間・同タイミングでの開示が求められます。

企業にはサステナビリティ関連のリスク・機会を一貫性ある形式で示す責任が発生し、投資家や取引先との信頼構築にも大きな影響があります。本記事では、基準の背景から対応ステップまでを順を追って解説します。

目次

SSBJ基準とは

SSBJはISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が発足したことを受け、2022年7月に「我が国における適用基準の策定と国際基準への貢献」を目的として設立されました[1]。

ISSBが策定したIFRS S1(全般的要求事項)・S2(気候関連開示)との整合性を基盤に、日本企業の実務に合わせた訳注や業種別選択肢を加えることで、国際比較可能性を保ちながら導入しやすい設計が特徴です。

公表された3つの基準概要

2025年2月19日の第49回会合で承認された基準は、以下の三本柱で構成されます[1]。

  • 適用基準:報告対象企業・期間・公開タイミングなどの基本ルール
  • 一般開示基準:ガバナンス、戦略、リスク管理、指標・目標に関するコア内容
  • 気候関連開示基準:TCFDの四要素に準拠し、温室効果ガス排出や移行リスクなど詳細項目を開示

各基準はISSB S1/S2を原則取り込みつつ、日本語表現の工夫や業種横断的指標の追加を可能にしています。

開示要求のポイント

SSBJ基準の主な要求事項は三点です[2]。

  • 財務諸表と同一の企業範囲・期間・公表タイミングで報告し、公表承認者や承認日を明示
  • 「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標・目標」の四要素で重要性ある項目を比較可能形式で開示
  • 気候関連ではスコープ1・2・3排出量や移行リスク、機会などを定量・定性両面で記載

これらにより、投資家やステークホルダーは企業のサステナビリティ実績を正確に評価できます。

ISSB基準との主な相違点

SSBJ基準はISSB基準と整合性を保ちながら、日本企業向けに以下の追加・調整を行っています[2]。

  • 日本語での読みやすさ重視:章立てや用語の最適化
  • スコープ2排出のマーケット基準の選択肢追加
  • 比較情報の経過措置:初年度は前年度比較を免除可能
  • 業種別指標の選択制:ISSBのガイダンス参照で必要指標を柔軟に開示

この設計により、国際的整合性を保ちつつ実務負担を軽減します。

ギャップ分析の実施方法

最初のステップは現行のCSR報告書やTCFD開示とSSBJ基準を比較するギャップ分析です。まず、適用基準・一般基準・気候関連開示基準の各要件リストを作成し、既存開示項目との不一致を洗い出します。

その後、優先度を評価し、短期・中長期の対応計画を策定します。分析結果は経営層・IR部門など関係部署に共有し、対応フローを全社で合意することが重要です。

データ収集体制の整備

次に、サステナビリティ関連データの収集体制を見直します。排出量や環境負荷の定量データはERPシステムやサプライヤーデータベースと連携して自動取得を図ると効率的です。

定性情報については各部門からの定期レポート提出をルール化し、社内ワークフローを確立します。データの真正性を担保するため、第三者保証を視野に入れた内部統制整備も検討すべきです。

内部統制・承認プロセスの見直し

公表承認日は投資家判断に重要な情報となるため、取締役会・経営会議でのレビュー体制を強化します。開示ドラフト作成から承認までの期日設定と責任者を明確化し、承認履歴を電子証跡として保存します。

また、開示内容変更時の追跡機能を導入し、変更理由や承認者コメントを記録することで、透明性と信頼性を向上させることができます。

ステークホルダーコミュニケーション

基準適用による開示内容の強化は、投資家や取引先との対話機会を拡大します。開示内容変更点や新規開示情報をまとめた説明資料を作成し、決算説明会やIRサイトで公開します。

サステナビリティレポートに加え、ウェビナーや個別面談を活用して質疑応答の場を設けることで、理解促進と信頼構築を図ります。

適用スケジュールと経過措置

任意適用は2025年3月期報告書から可能ですが、金融商品取引法適用会社は段階的に原則適用が検討され、2027年3月期以降に適用対象が拡大される見込みです[2]。

初年度は比較情報開示の免除や気候関連リスク・機会のみ開示などの経過措置が認められます。企業は適用開始前に社内体制を整え、経過措置利用の要件確認を忘れないよう留意してください。

適用支援資料とリソース

SSBJは適用を支援するため、ISSBガイダンスの翻訳・要約資料や「SSBJハンドブック」、ASSET-SSBJ検索システムを提供しています[1]。

社内導入時にはハンドブックを社内研修教材として活用し、外部セミナーや専門家コンサルティングを併用するとスムーズに運用開始できます。

まとめと今後の展望

SSBJ基準はISSB基準との整合性を保ちながら日本企業向けに最適化された開示枠組みです。ギャップ分析から内部統制整備、ステークホルダー対話まで一連の対応を早期に始めることで、企業価値向上やESG投資促進に寄与できます。

2025年以降、国内外の規制・市場動向を注視しつつ、積極的な情報開示で持続可能な成長を実現しましょう。

参考文献

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