【なぜ?】救急車がサイレンを鳴らさずに走行する4つの理由

【なぜ?】救急車がサイレンを鳴らさずに走行する4つの理由

街中で救急車を見かけたとき、「あれ、サイレンが鳴っていないな…」と不思議に思った経験はありませんか?緊急事態を知らせるサイレンを鳴らさずに走っていると、何かあったのかと少し心配になりますよね。

しかし、救急車がサイレンを鳴らさないのには、ちゃんとした理由があります。決してサボっているわけでも、適当に走っているわけでもありません。

この記事では、救急車がサイレンを鳴らさずに走行する主な理由から、意外と知らない緊急走行のルール、そして私たちができることまで、分かりやすく解説していきます。

目次

救急車がサイレンを鳴らさない4つの主な理由

救急車がサイレンを鳴らさずに走行している場合、その背景にはいくつかの状況が考えられます。ここでは、代表的な4つの理由を見ていきましょう。

理由1:出動したものの、搬送の必要がなくなった

最も多い理由の一つが、119番通報を受けて出動したものの、結果的に誰も病院へ搬送する必要がなくなったケースです。これを「不搬送(ふはんそう)」や「引き上げ」と呼びます。

具体的には、以下のような状況が考えられます。

  • 通報者が自力で回復した、または症状が軽かった
  • 家族などが、かかりつけ医へ連れて行くことにした
  • 残念ながら、現場で死亡が確認された
  • 誤報やいたずら電話だった

このような場合、救急隊は現場から消防署へ戻りますが、もはや緊急走行をする必要はありません。そのため、赤色灯を消し、サイレンを止めて一般の車と同じように走行します。もしサイレンを鳴らして出動していく救急車とすれ違った数分後に、同じ救急車が静かに戻ってくるのを見かけたら、このケースに該当する可能性が高いでしょう。

理由2:緊急性の低い「転院搬送」

「転院搬送」とは、すでに入院している患者さんを、別の医療機関へ移送することです。例えば、「今いる病院では対応できない専門的な治療が必要になった」「症状が安定したので、リハビリ専門の病院へ移る」といったケースがこれにあたります。

この転院搬送のうち、患者さんの容態が安定しており、急を要さないと医師が判断した場合は、サイレンを鳴らさずに走行することがあります。

もちろん、搬送中に容態が急変するリスクがある場合や、一刻を争う場合は、緊急走行で向かいます。しかし、あくまで移動が目的であり、患者さんの状態も落ち着いている場合は、周囲の交通への影響も考慮し、一般車両として静かに走行するのです。このように、すべての搬送がサイレンを鳴らす緊急走行とは限らない、ということを知っておくと良いでしょう。

理由3:患者への配慮で音量を調整する場合(住宅モードなど)

患者さんのプライバシーや精神的な負担に配慮して、サイレンの音量を調整するケースがあります。公的な救急車は、法律上サイレンを完全に停止して緊急走行することはできません。しかし、音量を通常より下げる「住宅モード」といった機能を使い、深夜の住宅街や病院の近くで騒音を抑える配慮をすることがあります。

また、特に精神科への搬送など、患者さんの状態からサイレンを使わない搬送が望ましいと判断される場合は、消防の救急車ではなく「民間救急」が利用されることが多くあります。民間救急は、緊急走行を行わない代わりに、患者さんやご家族の要望に沿ったきめ細やかな移送サービスを提供しています。このように、患者さんへの配慮という点では、公的救急車は「音量調整」で、民間救急は「サイレン不使用」で対応を分けているのです。

理由4:車庫への帰還や移動中(回送)

これは最もシンプルな理由で、出動を終えて消防署(車庫)へ戻る途中や、点検・整備のために修理工場へ向かう途中など、緊急の用務がない場合です。これを「回送」と呼びます。

この状態の救急車は、外見こそ救急車ですが、法的には一般の車両と同じ扱いです。当然、緊急走行の必要はないため、サイレンを鳴らすことも赤色灯を点けることもありません。

また、大規模なイベントや災害に備えて、あらかじめ指定された場所へ移動して待機する場合などもあります。こうした事前配置のための移動も、緊急走行にはあたらないため、サイレンは鳴らしません。街中で静かに走る救急車を見かけたら、こうした「お仕事の移動中」である可能性も考えられます。

サイレンを鳴らす?鳴らさない?状況別比較表

救急車の走行モードは、大きく「緊急走行」と「一般走行」に分けられます。それぞれの状況やルールを比較表にまとめました。

項目緊急走行(サイレンあり)一般走行(サイレンなし)
主な状況・119番通報による現場への出動
・急を要する傷病者の搬送
・緊急性が高い転院搬送
・不搬送による引き上げ
・緊急性の低い転院搬送
・消防署への帰還、回送
・民間救急による搬送
目的人命救助のため、一刻も早く目的地へ到着すること傷病者や周囲へ配慮しつつ、安全に車両を移動させること
サイレン鳴らす(義務)
※音量調整する場合あり
鳴らさない
赤色灯点灯する(義務)消灯する
法的根拠道路交通法に基づく緊急自動車の扱い一般車両と同じ扱い
運転赤信号の通過や速度超過などが一部許容される一般の交通ルールを遵守する

このように、サイレンと赤色灯はセットで「緊急走行」のしるしとなります。どちらか一方でも欠けていれば、それは一般の車と同じ「一般走行」と覚えておくと分かりやすいです。

知っておきたい!救急車の「緊急走行」のルール

救急車が「緊急自動車」として特別な走行を許されるためには、法律で定められたルールを守る必要があります。私たちの安全にも関わる大切な知識なので、ぜひ知っておきましょう。

サイレンと赤色灯はセットが原則

緊急走行のルールは、道路交通法で定められています。具体的には、同法の施行令第14条で、緊急自動車は「サイレンを鳴らし、かつ、赤色の警光灯をつける」ように規定されています。

つまり、「サイレンを鳴らす」ことと「赤色灯を点灯させる」ことは、2つで1つのセットなのです。どちらか一方だけでは、法律上の緊急自動車とは認められません。このルールがあるからこそ、他のドライバーや歩行者は救急車の接近を確実に認識でき、安全に進路を譲ることができるわけです。

時々、「赤色灯だけ点けてサイレンを鳴らさないのはなぜ?」という疑問も聞かれますが、これは原則として法律違反にあたる可能性があります。ただし、先述の通り、住民への騒音に配慮して音量を下げるなどの運用は、各消防本部の判断に委ねられており、地域によって対応が異なる場合があります。

参考:道路交通法施行令(e-Gov法令検索)

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もし救急車を見かけたら?私たちができること

では、実際にサイレンを鳴らして走る救急車が近づいてきたら、私たちはどうすれば良いのでしょうか。落ち着いて行動するために、基本的なルールをおさらいしておきましょう。

交差点やその付近以外の場合

道路の左側に寄って、救急車に進路を譲ります。一方通行の道路などで左側に寄せるとかえって妨げになる場合は、右側に寄って譲ります。

交差点やその付近の場合

交差点を避け、道路の左側に寄って一時停止します。

特に重要なのは、慌てて急ブレーキを踏んだり、急ハンドルを切ったりしないことです。周囲の車も同じように救急車に気づいているとは限りません。まずは落ち着いて周りの状況を確認し、安全な方法で進路を譲ることが大切です。

また、「救急車を呼ぶべきか迷う…」という人のために、救急安心センター事業(#7119)という電話相談窓口が普及しつつあります。急な病気やケガで迷った際は、まずはお住まいの地域で#7119が利用可能か確認の上、相談することで適切なアドバイスが受けられます。本当に救急車を必要とする人のために、こうしたサービスを賢く利用することも、私たちにできる協力の一つです。
参考:救急車の適時・適切な利用(適正利用)|総務省消防庁

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まとめ

今回は、救急車がサイレンを鳴らさずに走行する理由について解説しました。

  • 出動したが必要がなくなった場合
  • 緊急性の低い転院搬送
  • 患者さんへの配慮(音量調整や民間救急の利用)
  • 消防署への帰還や回送

このように、サイレンが鳴っていないのには、きちんとした理由があることがお分かりいただけたかと思います。

救急車のサイレンや赤色灯は、私たちの安全を守るための重要なサインです。そのルールを正しく理解することで、いざという時に冷静かつ適切に行動できます。次に救急車を見かけた際には、この記事の内容を思い出してみてくださいね。

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