「例の件、一気通貫で進めておいて」
会議中、上司からこう言われて、一瞬頭が「?」でいっぱいになった経験はありませんか。なんとなく意味は推測できるものの、正確な意味や使い方には自信がない…という方も多いのではないでしょうか。
実はこの「一気通貫」、意味さえ分かれば、ビジネスの現場で非常に役立つ便利な言葉です。
この記事では、「おじさんビジネス用語」とも言われる「一気通貫」について、その意味や使い方、そしてスマートな言い換え表現まで、誰にでも分かるように徹底解説します。
「一気通貫」とは?基本的な意味をサクッと解説
「一気通貫(いっきつうかん)」とは、ずばり「最初から最後まで、一貫した方針や考えに基づいて物事を進めること」を意味する言葉です。途中で担当者や方針がブレることなく、スタートからゴールまでを一貫してやり遂げるニュアンスで使われます。
もともとは麻雀用語で、同じ種類の数牌(シューパイ)を1から9まで全て揃える役(やく)のことを指していました。そこから転じて、ビジネスシーンでも「始めから終わりまでを一貫して手掛ける」という意味で広く使われるようになったのです。
例えば、「企画から開発、販売までを一気通貫で行う」といった場合、それは企画段階から販売後のサポートまで、すべてを同じ部署や会社が責任を持って担当することを表します。これにより、プロジェクト全体に統一感が生まれ、話の食い違いや責任の押し付け合いといったトラブルを防ぐ効果が期待できます。
単に「最初から最後までやる」というだけでなく、「一貫した理念や目的を持って取り組む」という、ポジティブで力強い意志が込められた言葉だと理解しておくと良いでしょう。
なぜビジネスで好まれる?「一気通貫」が持つ3つのメリット
では、なぜ多くのビジネスパーソンは「一気通貫」という言葉を好んで使うのでしょうか。それは、この言葉が持つビジネス上のメリットと密接に関係しています。主なメリットを3つ見ていきましょう。
① 責任の所在が明確になる
プロジェクトを複数の部署や担当者で分担すると、「これは自分の担当範囲外だ」「それはあの部署の問題だ」といったように、責任の所在が曖昧になりがちです。しかし、一気通貫の体制を敷くことで、最初から最後までを担当する部署やチームが明確になります。
これにより、何か問題が発生した際にも迅速な対応が可能となり、当事者意識を持ってプロジェクトを進められるようになります。クライアントから見ても、「あの会社に任せれば全部やってくれる」という安心感につながるでしょう。
② 業務の効率化とスピードアップ
部署間の連携や引き継ぎには、意外と多くの時間と労力がかかります。それぞれの部署で方針が異なったり、情報伝達がうまくいかなかったりすると、手戻りや確認作業が発生し、プロジェクト全体の遅延につながりかねません。
一気通貫であれば、こうした部門間の障壁(セクショナリズム)がなくなり、意思決定のプロセスが大幅に簡略化されます。その結果、無駄な調整業務が減り、プロジェクトをスピーディに進めることが可能になるのです。
③ 顧客満足度の向上につながる
顧客の視点に立つと、問い合わせるたびに担当者が変わったり、部署をたらい回しにされたりするのは大きなストレスです。一気通貫のサービスは、最初の相談からアフターフォローまで同じ窓口や担当者が対応してくれるため、顧客は安心してサービスを利用できます。
また、顧客の要望や課題がプロジェクト全体で一貫して共有されるため、最終的な成果物やサービスの質が高まりやすくなります。こうした一貫した高品質な体験が、結果的に顧客満足度の向上に直結するのです。
【例文付き】「一気通貫」の具体的な使い方と注意点
「一気通貫」の意味とメリットが分かったところで、次は具体的な使い方を見ていきましょう。例文を交えながら、効果的な使い方と、少しだけ注意したいポイントを解説します。
ポジティブなニュアンスで使う場合
「一気通貫」は、自社の強みや仕事への姿勢をアピールする際に非常に効果的です。責任感や一貫性を強調したい場面で使うと、相手にプロフェッショナルな印象を与えられます。
【例文】
- 「弊社では、素材の調達から製品の加工、販売までを一気通貫で管理しております。」
- 「今回のプロジェクトは、Aチームが一気通貫で担当しますのでご安心ください。」
- 「企画から運用まで一気通貫のサポート体制が、当社の最大の強みです。」
このように、サービスの全体像や責任体制を明確に伝えたいときに役立ちます。
使う相手や場面への配慮も大切
「一気通貫」は便利な言葉ですが、業界や職種によってはあまり馴染みがない場合もあります。特に、社外のクライアントや、ビジネス用語に慣れていない若手メンバーに対して使う際は、相手が意味を理解しているか少し注意が必要です。
もし相手がピンと来ていないような表情をしたら、「つまり、企画から販売まで全部うちでやります、ということです」のように、後述するような分かりやすい言葉で補足すると親切でしょう。
また、多用しすぎると「また言ってる…」と、いわゆる「おじさん構文」のように聞こえてしまう可能性もゼロではありません。TPOをわきまえ、ここぞという場面でスマートに使うのが、デキるビジネスパーソンの腕の見せ所です。
「一気通貫」の言い換え表現・類語集【比較表】
「一気通貫」を使いたいけれど、相手に伝わるか不安なときや、もっと柔らかい表現を使いたいときのために、便利な言い換え表現を覚えておきましょう。ニュアンスの違いを比較表にまとめました。
言い換え表現 | ニュアンス・特徴 | 主な使われ方 | 例文 |
---|---|---|---|
ワンストップ | カタカナ語でスマートな印象。手続きや窓口が一つに集約されている点を強調。 | IT業界、行政サービス、不動産業界など | ワンストップでサービスを提供します。 |
トータルサポート | 全体的に支援・援助するというニュアンス。顧客への手厚い対応をアピールしたいときに。 | BtoCサービス、コンサルティングなど | 設計から施工までトータルサポートします。 |
包括的 | やや硬い表現。全体をひっくるめて対応することを示す、フォーマルな言葉。 | 契約書、公的な文書、研究発表など | 包括的なセキュリティ対策を講じる。 |
一貫して | 「一気通貫」の「通貫」を分かりやすくした表現。方針や態度が変わらないことを示す。 | 理念や方針を語るとき、社内での会話 | 創業以来、一貫して品質を追求する。 |
川上から川下まで | 製造業や物流業界でよく使われる比喩表現。原料調達から消費者に届くまでを指す。 | 製造業、サプライチェーン関連 | 川上から川下まで自社で管理する。 |
これらの表現を状況や相手に応じて使い分けることで、あなたのコミュニケーションはより円滑で、深みのあるものになるはずです。特に「ワンストップ」や「一貫して」は、多くの場面で「一気通貫」の代わりに使える便利な言葉なので、ぜひ覚えておきましょう。
「一気通貫」と反対の言葉は?対義語を知って理解を深める
物事を深く理解するためには、反対の概念を知るのが効果的です。「一気通貫」の対義語には、どのような言葉があるのでしょうか。
代表的なのが「縦割り(たてわり)」や「部分最適(ぶぶんさいてき)」です。
「縦割り」は、組織内で各部署が独立し、互いの連携が取れていない状態を指します。いわゆる「セクショナリズム」のことで、部署間の壁が高く、情報共有や協力体制が築きにくい状況を表すネガティブな言葉です。
一方、「部分最適」は、会社全体としての利益(全体最適)よりも、個々の部署や個人の利益を優先してしまう考え方のこと。「自分の部署さえ良ければいい」という思考が、結果的に会社全体のパフォーマンスを下げてしまうケースで使われます。
「一気通貫」が目指すのが、これらの「縦割り」や「部分最適」の弊害をなくし、組織全体として最大の成果を出す「全体最適」の状態である、と覚えておくと理解がより一層深まるでしょう。
まとめ:一気通貫を正しく理解し、ビジネスコミュニケーションを円滑に
今回は、ビジネス用語「一気通貫」の意味から使い方、メリット、そして便利な言い換え表現までを詳しく解説しました。
- 一気通貫とは、「最初から最後まで一貫した方針で物事を進めること」
- 「責任の明確化」「効率化」「顧客満足度の向上」といったメリットがある
- 自社の強みをアピールする際に有効だが、相手によっては配慮が必要
- 「ワンストップ」や「一貫して」など、状況に応じた言い換えができるとスマート
「一気通貫」は、少し古風な響きがあるかもしれませんが、その言葉が持つ「責任感」や「一貫性」のニュアンスは、現代のビジネスにおいても非常に重要です。
意味を正しく理解し、場面に応じて言い換え表現と使い分けることで、あなたのコミュニケーション能力はさらに向上するはずです。ぜひ明日からの仕事に役立ててみてください。
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