SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」とは?日本の現状や取り組みをわかりやすく解説

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」とは?日本の現状や取り組みをわかりやすく解説

「平和な社会」と聞くと、少し壮大で、自分とは遠い世界の話だと感じるかもしれません。しかし、SDGsが掲げる目標16「平和と公正をすべての人に」は、戦争や紛争をなくすことだけを目指しているのではありません。

実は、私たちの毎日の暮らしを守る、とても大切な土台に関わる目標なのです。この記事では、SDGs目標16が具体的に何を目指しているのか、そして日本の現状や私たちにできることについて、分かりやすく解説していきます。

目次

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」の基本

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」は、持続可能な開発のため、平和で包摂的な社会を推進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築することを目指すものです。

少し難しい言葉が並んでいますが、要約すると以下の3つのポイントに集約されます。

  1. あらゆる暴力をなくし、安全な社会を作る紛争や犯罪だけでなく、家庭内での虐待やいじめといった、身近な暴力もなくすことを目指します。誰もが安心して暮らせる社会がゴールです。
  2. すべての人が法律や制度で公平に守られる年齢や性別、家柄、障がいの有無などで差別されることなく、誰もが法律によって公平に守られ、正当な裁判を受けられる権利(司法へのアクセス)を保障することを目指します。
  3. 汚職や賄賂をなくし、透明性の高い組織を作る政府や企業といった組織において、不正行為や汚職をなくし、誰もが納得できるような、透明で公正な仕組みを構築することが求められます。

このように、目標16は遠い国の話だけでなく、私たちの社会の「当たり前の安心」を支えるための、非常に重要な土台作りに関する目標といえるでしょう。

なぜ今、SDGs目標16「平和と公正」が重要視されるのか?

世界に目を向けると、今この瞬間も紛争によって故郷を追われる人々がいます。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告によると、2023年末時点で、紛争や迫害によって避難を余儀なくされた人々の数は、世界で1億1,730万人にのぼりました。これは過去最多の数字です。

また、世界銀行の推計では、企業や個人が支払う賄賂の総額は、年間1兆ドル以上に達するといわれています。汚職は、本来であれば教育や医療、インフラ整備などに使われるべきお金を奪い、国の発展を妨げる大きな要因となります。

こうした暴力や不正は、人々の命や人権を脅かすだけでなく、経済活動を停滞させ、貧困や飢餓、教育の機会損失といった、他のSDGs目標の達成を阻む根本的な原因にもなっているのです。

平和で公正な社会という土台がなければ、その上にどんな立派な家(経済成長や豊かな暮らし)を建てようとしても、すぐに崩れてしまいます。だからこそ、すべての目標の基礎となるSDGs目標16が、今、世界中で重要視されているといえます。

参考:UNHCR Global Trends 2023

日本におけるSDGs目標16の現状と身近な問題

「日本は平和で安全な国」というイメージが強いですが、目標16の視点で見ると、私たちの国内にも解決すべき課題が数多く存在します。遠い国の話ではなく、私たちの暮らしに直結する問題として捉えることが大切です。

具体的にどのような課題があるのか、下の表で確認してみましょう。

課題の種類具体的な内容日本の現状
子どもへの暴力児童虐待やいじめの問題。すべての子どもが安全に成長できる環境が求められる。こども家庭庁によると、2022年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待相談件数は21万9,170件で過去最多を更新しています。
司法へのアクセス経済的な理由や知識不足から、弁護士への相談や裁判をためらってしまう人がいる。法テラス(日本司法支援センター)は、経済的に余裕のない人への無料法律相談や弁護士費用の立替えを行っていますが、制度の認知度などになお課題があります。
情報へのアクセスと報道の自由国民が政府や企業の活動について正しい情報を得て、意思決定できる環境の確保。国境なき記者団が発表した2024年の「世界報道の自由度ランキング」で、日本は180カ国中70位でした。主要先進国の中では低い水準にとどまっています。
女性や外国人への差別性別や国籍などを理由とした差別や偏見が、社会の中に根強く残っている。世界経済フォーラムが発表したジェンダー・ギャップ指数2023で、日本は146カ国中125位と、依然として世界最低レベルです。

このように見ると、日本においても「平和と公正」がすべての人に行き渡っているとは言い切れない状況が分かります。これらの課題は、決して他人事ではなく、私たちの社会全体の安定を揺るがしかねない問題なのです。

私たちにできること|平和と公正な社会の実現に向けたアクション

壮大な目標を前に、「自分にできることなんてあるのだろうか?」と感じるかもしれません。しかし、平和で公正な社会を築くためには、私たち一人ひとりの小さな行動の積み重ねが不可欠です。

特別なことでなくても、日常生活の中でできることはたくさんあります。

選挙に参加し、自分の意思を示す

選挙は、私たちの代表者を選び、社会のあり方を決めるための重要な機会です。各候補者や政党がどのような社会を目指しているのかを学び、投票に行くことは、公正な社会づくりへの第一歩となります。

正しい情報を見極める力を養う

インターネットやSNSには、真偽不明な情報や、誰かを傷つけるような偏った意見が溢れています。情報を鵜呑みにせず、複数の情報源を比較したり、公的な機関が発信する情報を確認したりする習慣をつけましょう。信頼できる情報に基づいて行動することが、公正な判断につながります。

差別や偏見に「NO」と言う

自分の周りで、性別、国籍、障がいなどを理由とした差別的な言動やいじめを見聞きしたら、見て見ぬふりをしない勇気を持ちましょう。直接声を上げることが難しくても、信頼できる人に相談したり、関連機関に通報したりすることで、状況を変える一助となります。

関連団体への寄付やボランティア

子ども食堂の支援、DV被害者のシェルター運営、外国人への生活サポートなど、国内には目標16の課題解決に取り組むNPO/NGOが数多く存在します。こうした団体に寄付をしたり、ボランティアとして活動に参加したりすることも、社会を支える具体的なアクションです。

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まとめ

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」は、単に戦争をなくすだけでなく、私たちの日常にある暴力や不平等をなくし、誰もが安心して暮らせる社会の土台を築くことを目指す、非常に重要な目標です。

日本に住んでいると、その大切さを実感しにくいかもしれませんが、私たちの社会もまた、さまざまな課題を抱えています。

まずは、自分の身の回りにある課題に関心を持つこと。そして、選挙への参加や正しい情報を見極める意識など、自分にできる小さな一歩を踏み出すこと。その積み重ねが、誰一人取り残さない、真に平和で公正な社会の実現につながっていくはずです。

SDGsってなんだろう?~未来への羅針盤、基本のキ~

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