SDGs目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」をわかりやすく解説

SDGs目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」をわかりやすく解説

私たちが毎日使う電気や水道、スマートフォンで世界中の情報にアクセスできるインターネット。これらはすべて「インフラ」と呼ばれる社会の基盤のおかげです。

SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」は、このインフラをさらに発展させ、災害に強く、環境にも配慮した新しい技術を取り入れて、世界中のみんなが豊かになれる社会を目指すための目標です。

この記事では、目標9が掲げる未来や世界の現状、そして私たちが今日からできることまで、わかりやすく解説していきます。

目次

SDGs目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」とは?

この目標は、大きく3つの重要な柱で成り立っています。

  1. 強靭(レジリエント)なインフラを整備する
  2. 誰も置き去りにしない、持続可能な産業化を進める
  3. 新しい技術やアイデア(イノベーション)を応援する

「インフラ」と聞くと、道路や電気、水道などをイメージするかもしれません。もちろんそれらも重要ですが、目標9ではインターネットのような通信環境も大切なインフラだと考えています。そして、ただ作るだけでなく、地震や台風といった自然災害が起きても簡単には壊れない、しなやかで強い(強靭な)インフラであることが求められます。

また、「持続可能な産業化」とは、環境に大きな負担をかけず、資源を大切に使いながら、世界中の人々が公平に働ける機会を持てるような産業のあり方です。一部の国だけが豊かになるのではなく、開発途上国も含め、誰もがその恩恵を受けられる仕組み作りを目指します。

そして、これらの課題を解決するカギとなるのが「技術革新」です。新しい技術や斬新なアイデアは、より少ないエネルギーでモノを作ったり、遠く離れた場所へ教育や医療を届けたりすることを可能にします。この目標は、未来の暮らしをより良くするための土台作りそのものなのです。

世界と日本の現状|目標9に関する課題

目標9の達成に向けて、世界や日本はどのような課題を抱えているのでしょうか。

世界に目を向けると、いまだに安定したインフラを利用できない人々が大勢います。例えば、国際電気通信連合(ITU)の2023年の報告によると、世界人口の約3分の1にあたる26億人がインターネットを利用できていません。教育や医療、ビジネスの機会など、多くのことがオンライン化する現代において、これは深刻な格差(デジタル・デバイド)を生む原因となっています。また、開発途上国では、安全な道路や電力網の整備が追いついておらず、経済発展の大きな足かせとなっているのが現状です。

一方、日本に課題はないのでしょうか。実は、日本も大きな課題を抱えています。その一つが「インフラの老朽化」です。高度経済成長期に集中的に整備された橋やトンネル、水道管などが、建設から50年以上経過し、一斉に更新時期を迎えています。これらを安全に維持管理していくためには、莫大な費用と人手が必要であり、深刻な問題です。また、新しい技術やビジネスを生み出す力、いわゆる「イノベーション創出力」の停滞も指摘されています。かつては技術大国と呼ばれた日本ですが、デジタル化の遅れや研究開発への投資の伸び悩みなど、解決すべき点は少なくありません。

目標達成に向けたターゲット(具体的な目標)を解説

SDGs目標9には、2030年までに達成すべき具体的な8つのターゲット(小目標)が設定されています。ここでは、特に重要なものをいくつかピックアップして見てみましょう。

  • 9.1:質の高い、信頼でき、持続可能で強靭(レジリエント)なインフラを開発する。これは、国内だけでなく国境を越えたインフラも含む、経済発展と人々の暮らしを支える基盤をしっかりと整えることを目指します。災害に強く、誰もが公平に利用できることが重要です。
  • 9.2:包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、各国の状況に応じて雇用とGDPに占める製造業の割合を大幅に増やす。環境に配慮し、働く人の権利も守られる形での産業発展を促します。特に、まだ産業が十分に育っていない国々(後発開発途上国)では、その割合を2倍にすることを目指す、としています。
  • 9.4:インフラや産業を、よりクリーンで環境に配慮したものへ改良する。すべての国が、今ある技術や資源をより効率的に使い、環境負荷の少ない新しい技術を取り入れることで、持続可能な社会にアップグレードしていくことを求めています。
  • 9.c:後発開発途上国において、普遍的かつ安価なインターネット・アクセスを提供できるよう図る。情報格差をなくすため、2020年までという非常に早い期限が設定されたターゲットです(達成には至っていませんが、重要性は増しています)。インターネットは、現代社会に不可欠なインフラであるという認識が示されています。

これらのターゲットは、ただモノを作る、技術を進めるだけでなく、「誰一人取り残さない」というSDGs全体の理念が強く反映された内容となっています。

私たちの生活との関係|個人でできること

「インフラや産業の話はスケールが大きくて、自分にできることはなさそう…」と感じるかもしれません。しかし、私たちの暮らしは目標9と密接につながっており、貢献できることもたくさんあります。

例えば、買い物の際に「地元の工場で作られた製品」や「環境に配慮した製法で作られた商品」を選んでみるのはどうでしょうか。これは、地域経済を支え、持続可能な産業を応援する立派な行動です。フェアトレード製品を選ぶことも、途上国の公正な産業化を後押しします。

また、新しい技術やサービスに関心を持つのも大切な一歩です。例えば、地域の課題を解決しようとするベンチャー企業をクラウドファンディングで支援したり、再生可能エネルギーを利用した電力会社に切り替えたりすることも、技術革新を支えることにつながります。

さらに、防災への備えもインフラとの関わりで重要です。ハザードマップで自宅周辺のインフラ(避難所、危険な道路など)を確認したり、地域の防災訓練に参加したりすることは、いざという時に自分や家族の命を守るだけでなく、インフラの重要性を再認識する機会にもなります。

使わなくなったスマートフォンやパソコンを、ルールに従って正しくリサイクルすることも忘れてはいけません。それらは貴重な資源であり、適切に回収することで、新たな製品に生まれ変わるのです。

企業の取り組み事例【比較表で解説】

多くの企業も、ビジネスを通じて目標9の達成に貢献しようと動き出しています。ここでは、従来のやり方とSDGsを意識した取り組みを比較表で見てみましょう。

分野従来の取り組みSDGs目標9を意識した取り組み
建設業新しいインフラ(道路、橋など)を建設することが中心。最新のセンサー技術でインフラの劣化状況を監視し、計画的に修繕して長寿命化を図る。災害に強い設計を取り入れる。
製造業とにかく安く、大量に製品を作ることを優先する。製造工程で使うエネルギーを再生可能エネルギーに切り替え、CO2排出量を削減。廃棄物を減らす工夫やリサイクルしやすい設計を採用。
IT・通信業主に都市部で高速な通信サービスを提供する。過疎地や開発途上国にも安価で安定したインターネット環境を届ける技術を開発。オンラインでの教育や医療サービスを支援。
金融業企業の収益性や将来性を重視して融資先を決定する。環境技術や社会課題の解決に取り組むスタートアップ企業へ積極的に投資・融資する(ESG投資)。

このように、企業は自社の強みである技術やノウハウを活かして、社会の課題解決に挑戦しています。例えば、ある建設会社は、ドローンやAIを活用して、人が立ち入れない場所のインフラ点検を効率化するサービスを開発しました。これは、作業員の安全確保とインフラの長寿命化を同時に実現する、まさしく目標9に貢献する取り組みと言えるでしょう。

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まとめ:未来の「当たり前」を作るために

SDGs目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」は、私たちの生活と社会の豊かさを支える「土台」を、未来に向けてより強く、より良く作り変えていこうという壮大な目標です。

災害に強い社会、環境に優しい産業、そして誰もが情報やチャンスにアクセスできる世界。それは、今の私たちにとっては理想かもしれませんが、この目標を達成することで、未来の世代にとっては「当たり前」になるかもしれません。

そのためには、政府や企業による大きな投資や技術開発はもちろん不可欠です。しかし同時に、私たち一人ひとりが社会の仕組みに関心を持ち、日々の消費行動や地域活動の中で少しずつ意識を変えていくことも、力強い後押しとなります。

未来の「当たり前」を作る一員として、あなたも今日からできることを探してみてはいかがでしょうか。

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