「SDGs」という言葉をよく聞くようになったけど、目標がたくさんあって少し難しく感じていませんか?
今回はその中の一つ、SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」について、どこよりも分かりやすく解説します。
この記事を読めば、目標15がなぜ大切なのか、世界や日本の現状、そして私たちの暮らしの中で何ができるのかが、すっきりと理解できますよ。
SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」とは?
SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」を、ひと言でいうと「地球の緑や生き物たちが暮らす環境を、これからもずっと守り続けていこう」という目標です。
もう少し詳しく見ると、「陸の生態系(生き物同士のつながり)を守り、回復させ、持続可能な形で利用していくこと」を目指しています。具体的には、森林の管理や砂漠化への対処、土地の劣化を防ぎ、多様な生き物が失われるのを食い止めることなどが含まれます。
なぜ「豊かさ」という言葉が使われているのでしょうか。
それは、私たちが生きる上で欠かせない恵みを、陸の自然がたくさん与えてくれているからです。
- きれいな空気や水: 森林が二酸化炭素を吸収し、きれいな酸素を作ってくれます。森に降った雨は、時間をかけてろ過され、清らかな水となります。
- 食料や資源: 野菜や果物はもちろん、家や家具に使われる木材など、多くの資源を陸の恵みから得ています。
- 心の安らぎ: 公園の緑や森林浴で、心が癒された経験はありませんか?自然は私たちの心にも豊かさをもたらしてくれます。
このように、私たちの生活は陸の豊かさの上に成り立っています。この大切な基盤を守り、未来の世代にも引き継いでいくことが、目標15の核心なのです。
なぜ陸の豊かさを守る必要があるの?世界の現状
「陸の豊かさを守る」と聞いても、あまりピンとこないかもしれません。しかし今、私たちの足元にある地球では、無視できない問題が起きています。
深刻化する森林破壊と砂漠化
地球の「緑の肺」ともいわれる森林が、驚くべきスピードで失われていることをご存じでしょうか。
国連食糧農業機関(FAO)の報告によると、2015年から2020年の間に、毎年平均で1,000万ヘクタールもの森林が失われました。これは、日本の国土の約4分の1に相当する広さです。
主な原因は、食料生産のための農地への転換、無計画な伐採、そして気候変動による森林火災の増加などが挙げられます。
同時に、土地が潤いを失い、植物が育たなくなる「砂漠化」も深刻な問題です。すでに世界の土地の3分の1以上が砂漠化の影響を受けており、食料不足や水不足を引き起こしています。これも、気候変動や人間による過剰な土地利用が原因と考えられています。森林がなくなれば、その土地の保水力は失われ、砂漠化はさらに加速してしまうのです。
絶滅の危機に瀕する多くの生き物たち
森林や土地が劣化することで、そこに住む生き物たちも大きな影響を受けます。
国際自然保護連合(IUCN)が作成した「レッドリスト」によると、4万種以上の生物が絶滅の危機に瀕していると報告されており、これは評価対象となった種の28%以上にあたります。
「生き物が少し減っても、生活には関係ないのでは?」と思うかもしれません。しかし、それは大きな誤解です。
例えば、ミツバチのような花粉を運ぶ昆虫がいなくなれば、私たちが食べる野菜や果物の多くは実らなくなります。多様な生き物がお互いに支え合って生態系は成り立っており、一つでも欠けると全体のバランスが崩れ、最終的には人間の生活にも影響が及ぶのです。
陸の豊かさを守ることは、遠い自然の話ではなく、私たちの食卓や安全な暮らしに直結する、非常に身近な課題だといえるでしょう。
目標15の具体的なターゲットを分かりやすく解説
SDGs目標15には、より具体的な12個のターゲット(達成目標)が設定されています。全部見ると少し大変なので、ここでは特に私たちの生活に関わりの深いものをいくつかピックアップして、分かりやすくご紹介しますね。
15.1: 陸と淡水の生態系の保護
これは、森林や湿地、山、川、湖など、陸地と淡水の生き物たちが暮らす環境をきちんと守り、回復させようという目標です。自然公園の整備や、荒れてしまった自然を元に戻す活動などが含まれます。
15.2: あらゆる種類の森林の管理
違法な伐採をやめ、失われた森林を再生させるために木を植える活動を世界中で進めることを目指します。持続可能な方法で管理された森林から木材を利用することも、この目標達成につながる重要な取り組みです。
15.3: 砂漠化への対処と劣化した土地の回復
これ以上砂漠化が進むのを食い止め、すでに劣化してしまった土地を、再び緑豊かな状態に戻していこうという目標です。植林活動や、水資源の適切な管理などが求められます。
15.5: 絶滅危惧種の保護
密猟や生息地の破壊などによって絶滅の危機に瀕している動植物を守り、その数を回復させるための緊急行動を取ることを約束しています。
15.8: 外来種の侵入防止
もともとその地域にいなかった「外来種」が持ち込まれると、在来の生き物を食べてしまったり、生態系のバランスを崩したりすることがあります。ペットとして飼っていた外来種を野に放たないなど、新しい外来種が侵入するのを防ぎ、すでに定着してしまった外来種を管理することも大切な目標です。
陸の豊かさを守るための企業の取り組み事例
SDGs目標15の達成に向けて、多くの企業がすでに行動を始めています。ここでは、私たち消費者にも身近な取り組みを2つ紹介します。
FSC®認証・PEFC認証製品の選択
スーパーやコンビニで、「FSC®」や「PEFC」といったマークが付いた紙パックのジュースやティッシュペーパーを見たことはありませんか?
これらは「森林認証制度」のマークで、「この製品は、環境や社会に配慮し、適切に管理された森林の木材から作られていますよ」という証です。
例えば、大手コーヒーチェーンやファストフード店では、紙コップやテイクアウト用の袋にこの認証紙を積極的に採用しています。私たちがこうした認証マークのついた商品を選ぶことで、間接的に持続可能な森林経営を応援することになり、世界の森林保全に貢献できるのです。企業側も、こうした消費者のニーズに応えることで、環境に配責任ある企業としての姿勢を示すことができます。
サプライチェーン全体での生物多様性への配慮
製品が私たちの手元に届くまでには、原材料の調達、加工、輸送など、多くの過程(サプライチェーン)があります。陸の豊かさを守るためには、この全ての過程で環境への配慮が欠かせません。
特に「パーム油」は、お菓子や洗剤など多くの製品に使われていますが、その原料となるアブラヤシ農園の開発が、熱帯雨林の破壊やそこに住むオランウータンなどの生息地を奪う原因の一つと指摘されています。
そのため、多くの食品メーカーや日用品メーカーは、環境に配慮して生産されたことを示す「RSPO認証」を受けたパーム油の使用に切り替える動きを加速させています。
このように、企業は自社の事業活動が自然環境に与える影響をしっかりと把握し、原材料の選び方から見直すことで、陸の豊かさを守る取り組みを進めています。
私たちの暮らしとどう繋がる?今日からできること
「企業のような大きな取り組みは難しい…」と感じるかもしれませんが、そんなことはありません。私たちの毎日の小さな選択が、陸の豊かさを守る大きな力になります。
ここでは、誰でも今日から始められるアクションを、比較表でご紹介します。
アクションレベル | 具体的な行動 | なぜ繋がるの? |
---|---|---|
気軽にできること | ・コピー用紙の裏紙を使う・レシートを断る・FSC®認証マークのついた商品を買う | 紙の消費量を減らし、持続可能な森林管理を応援できます。 |
少し意識してできること | ・地元の野菜や食材を買う(地産地消)・旬のものを食べる・環境に配慮した製品を選ぶ(エシカル消費) | 食料の長距離輸送で出るCO2を削減し、環境負荷の少ない生産者を応援することに繋がります。 |
さらに挑戦したいこと | ・地域の清掃活動や植林イベントに参加する・環境保護団体へ寄付をする・ベランダで家庭菜園を始める | 直接的な自然保護活動を支援したり、身近な場所から緑を増やしたりできます。 |
いかがでしょうか?
「裏紙を使う」といった簡単なことからでも、目標15の達成に貢献できます。大切なのは、陸の豊かさが私たちの生活と密接に繋がっていると意識すること。そして、自分にできる範囲で、楽しみながらアクションを続けていくことです。
まずは、お買い物の際に少しだけ商品の裏側にあるマークを気にしてみることから始めてみませんか?
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まとめ
今回は、SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」について、その意味や世界の現状、そして私たちにできることまでを詳しく解説しました。
- 目標15は、私たちの生活を支える森林や土地、生物多様性を守り、未来へ引き継ぐための大切な目標。
- 世界では森林破壊や砂漠化、生物多様性の損失が深刻化している。
- FSC®認証マークのついた商品を選ぶなど、私たちの消費行動が森を守る力になる。
- 地産地消やゴミ拾いなど、身近なアクションで誰でも貢献できる。
陸の豊かさを守ることは、どこか遠い国の話ではありません。私たちが普段飲んでいる水や呼吸している空気、食べているもの全てに関わる、自分自身の問題です。
この記事をきっかけに、ぜひ身の回りにある自然に少しだけ目を向けてみてください。そして、あなたにできることから、一歩を踏み出してみましょう。その小さな一歩の積み重ねが、地球全体の豊かな未来を創り上げていくのです。
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