SDGs目標1「貧困をなくそう」が最重要な理由とは?絶対的・相対的貧困の違いと日本の現状を解説

SDGs目標1「貧困をなくそう」が最重要な理由とは?絶対的・相対的貧困の違いと日本の現状を解説

SDGsの最初の目標である「貧困をなくそう」は、なぜ最重要課題とされているのでしょうか?この記事では、絶対的貧困と相対的貧困の違いや、日本における貧困の現状、そして目標達成に向けた具体的なターゲットについて解説します。

目次

SDGsとは?目標1「貧困をなくそう」が最重要課題である理由

まず、SDGs(エスディージーズ)について簡単におさらいしましょう。SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、2015年9月の国連サミットで採択された、2030年までに達成を目指す国際目標です。「誰一人取り残さない」社会の実現を目指して、17の大きな目標と、それらをより具体的にした169のターゲットで構成されています。地球規模の課題から、私たちの暮らしに関わることまで、本当に幅広い分野をカバーしているんですよ。

そして、その17ある目標の中で、堂々の1番目に掲げられているのが「貧困をなくそう」です。なぜこれが最初に来るのでしょうか?それは、貧困があらゆる問題の根源となりうるからです。例えば、貧しいと十分な食事や清潔な水が得られず、健康を損ないやすくなります(目標2「飢餓をゼロに」、目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標6「安全な水とトイレを世界中に」に関連)。また、学校に通うことができず、教育の機会が奪われてしまうこともあります(目標4「質の高い教育をみんなに」に関連)。さらに、性別による不平等(目標5「ジェンダー平等を実現しよう」)や、紛争(目標16「平和と公正をすべての人に」)とも深く結びついています。

つまり、貧困という課題を解決に向かわせることが、他の多くの目標達成への第一歩となるのです。だからこそ、SDGsでは目標1を最重要課題の一つとして位置づけているわけですね。この目標を理解することは、SDGs全体を理解する上でも非常に大切だと言えるでしょう。

そもそも「貧困」って何だろう?2つの種類と日本の現状

「貧困」と一口に言っても、実はいくつかの捉え方があります。SDGs目標1を理解する上で、まず知っておきたいのが「絶対的貧困」と「相対的貧困」という2つの考え方です。これらを区別することで、世界の貧困問題と、私たちの身近にある貧困問題の両方を見つめやすくなります。

絶対的貧困とは?

絶対的貧困とは、人間として最低限の生存を維持するための食料や水、住居、衣類などを手に入れることができない状態を指します。つまり、今日生きるか死ぬか、という極めて深刻な状況にある人々のことです。世界銀行は、2022年に国際貧困ラインを1日2.15米ドル未満で生活する人々と定義しています。主に開発途上国で見られる貧困の形態で、紛争や自然災害、慢性的な食糧不足などが原因となることが多いです。この絶対的貧困の撲滅は、SDGs目標1の大きな柱の一つとなっています。

相対的貧困とは?

一方、相対的貧困とは、その国や地域の社会の中で大多数の人よりも著しく低い所得水準で生活している状態を指します。具体的には、その国の等価可処分所得(世帯の所得を世帯人数の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分に満たない所得で暮らす人々の割合で示されることが多いです。日本のような先進国における貧困は、主にこの相対的貧困を指します。

「日本に貧困なんてあるの?」と驚かれるかもしれませんが、厚生労働省の2022年「国民生活基礎調査」によると、2021年の日本の相対的貧困率は15.4%でした。これは、およそ6~7人に1人が相対的貧困の状態にあることを意味します。特に深刻なのが子どもの貧困で、2021年の子どもの貧困率(17歳以下)は11.5%と、約9人に1人の子どもが相対的貧困下で生活していることになります。これは、教育の機会均等や将来の選択肢にも影響を与えかねない、非常に重要な問題です。

このように、貧困には異なる側面があり、それぞれの状況に応じた対策が必要となります。絶対的貧困と相対的貧困、この2つの視点を持つことが、貧困問題の理解を深める第一歩と言えるでしょう。

なぜ貧困はなくならないの?世界の現状と複雑な原因

「貧困をなくそう」という目標が掲げられて久しいですが、なぜ今もなお、世界から貧困はなくならないのでしょうか。その背景には、一つだけでは説明できない、複雑に絡み合った原因が存在します。世界の貧困の現状と、その主な原因について見ていきましょう。

世界の貧困の現状

まず、世界の貧困の現状ですが、国際的な努力により絶対的貧困の割合は過去数十年で大幅に減少しました。しかし、依然として多くの人々が厳しい状況に置かれています。世界銀行によると、2019年の時点で約6億4800万人が1日2.15ドル未満で生活する極度の貧困状態にありました。特に、サハラ以南のアフリカ地域では、依然として貧困率が高く、多くの人々が困難な生活を強いられています。

近年では、新型コロナウイルス感染症のパンデミックや気候変動、各地で頻発する紛争などが、貧困削減の努力に大きな打撃を与えています。一度貧困ラインから抜け出せたとしても、こうした外的要因によって再び貧困に逆戻りしてしまうケースも少なくありません。貧困問題は、決して一直線に解決に向かうわけではなく、常に新たな課題に直面しているのです。

貧困を引き起こす主な原因

貧困がなくならない背景には、以下のような要因が複雑に絡み合っています。

  1. 紛争・内戦: 紛争や内戦は、人々の生活基盤を破壊し、住む場所を追われ、食料や水へのアクセスを困難にします。また、経済活動も停滞させ、多くの人々を貧困へと追いやります。平和がなければ、持続的な開発は望めません。
  2. 気候変動・自然災害: 干ばつ、洪水、台風といった気候変動による異常気象や自然災害は、農作物の不作やインフラの破壊を引き起こし、特に農業に依存する地域の貧しい人々に深刻な影響を与えます。災害からの復興も容易ではなく、貧困の悪循環を生み出します。
  3. 教育の欠如・機会の不均等: 教育を受ける機会がないと、安定した職に就くことが難しくなり、貧困から抜け出すための知識やスキルを身につけることができません。特に、女の子や障害を持つ子どもなど、社会的に弱い立場にある人々が教育の機会から排除されやすい傾向にあります。
  4. 病気・医療アクセスの不備: 病気になると働けなくなり、収入が途絶えてしまいます。また、適切な医療サービスを受けられないと、病気が重症化したり、高額な医療費が家計を圧迫したりして、貧困に陥る原因となります。
  5. 経済構造・不公正な貿易: 国内の経済格差や、国際的な貿易の仕組みが不公正である場合、一部の国や人々だけが豊かになり、多くの人々が貧困から抜け出せない状況が生まれます。グローバル化が進む中で、こうした構造的な問題も無視できません。
  6. 差別・社会的排除: 特定の人種、民族、宗教、性別、カーストなどを理由とした差別や社会的排除も、貧困の大きな原因です。差別によって、教育や雇用の機会が奪われ、社会参加が制限されることで、貧困が固定化されてしまいます。

これらの原因は、単独で存在するというよりも、互いに影響し合いながら貧困を深刻化させています。だからこそ、多角的なアプローチで問題解決に取り組む必要があるのです。

SDGs目標1「貧困をなくそう」の具体的なターゲットとは?

SDGsの目標1「貧困をなくそう」は、非常に大きな目標ですが、これを達成するために、より具体的な7つのターゲットが設定されています。これらのターゲットを知ることで、目標1が具体的に何を目指しているのか、より深く理解することができます。一つひとつ見ていきましょう。

  • ターゲット1.1: 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
    • これは、先ほど説明した「絶対的貧困」をなくすことを目指すターゲットです。国際貧困ラインはその後1日2.15ドルに見直されていますが、目標としては最も厳しい状況にある人々を救済することが掲げられています。
  • ターゲット1.2: 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を少なくとも半減させる。
    • こちらは「相対的貧困」にも目を向けたターゲットです。各国がそれぞれの基準で定める貧困ラインを下回る人々の割合を、半分に減らすことを目指します。日本もこのターゲット達成に向けて取り組む必要があります。
  • ターゲット1.3: 各国において、最低限の生活水準を保障する社会保護制度(ソーシャル・プロテクション・フロア)を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。
    • 失業手当、年金、医療保険、生活保護といったセーフティネットを充実させ、貧困に陥りやすい人々を支える仕組みを整えることを目指します。
  • ターゲット1.4: 2030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、すべての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理、相続財産、天然資源、適切な新しい技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。
    • 電気、水道、教育、医療といった基本的なサービスや、土地や財産を持つ権利、金融サービスへのアクセスなどを、誰もが平等に得られるようにすることを目指しています。これらは自立した生活を送る上で不可欠な要素です。
  • ターゲット1.5: 2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。
    • 自然災害や経済危機などが起きた際に、貧しい人々が大きな被害を受けないように、また被害を受けても速やかに立ち直れるような、しなやかで強い社会を作ることを目指します。防災対策や保険制度の整備などが含まれます。

さらに、これらのターゲットを達成するための具体的な手段として、以下の2つのターゲットも設定されています。

  • ターゲット1.a: あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して、さまざまな供給源から集めた資源を十分に供給できるようにする。
    • 開発途上国が貧困削減に取り組むために必要なお金や技術を、先進国などが協力して提供していくことを目指します。
  • ターゲット1.b: 貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。
    • 貧困削減に効果的な政策を作り、それを実行していくためのしっかりとした計画や仕組みを、国際的にも国内的にも整えることを目指します。

これらのターゲットを見ると、SDGs目標1が単にお金を配るということだけでなく、社会の仕組みそのものを変え、人々が自立して生活できるような環境を整えることを目指しているのが分かりますね。

参考:SDGグローバル指標(SDG Indicators)|外務省SDG Indicators

貧困をなくすために私たちにできること:今日から始められるアクション

「世界の貧困をなくすなんて、壮大すぎて自分には何もできないよ…」そう感じる方もいるかもしれません。でも、そんなことはありません。私たち一人ひとりの小さな行動も、積み重なれば大きな力となり、貧困問題の解決に貢献できるのです。ここでは、個人レベルで今日からでも始められるアクションをいくつかご紹介します。

1. 知る・関心を持つ

まず一番大切なのは、貧困問題について「知る」ことです。この記事を読んでくださっているあなたは、すでに関心を持ち、第一歩を踏み出しています。世界の貧困の現状や原因、そしてSDGsの目標について理解を深めることで、問題意識を持つことができます。ニュースやドキュメンタリーを見たり、関連書籍を読んだり、信頼できる団体のウェブサイトをチェックしたりするのも良いでしょう。家族や友人とこの問題について話し合ってみるのも、理解を深めるきっかけになります。

2. 寄付をする

貧困に苦しむ人々を直接支援する方法として、信頼できるNPO/NGOなどの団体へ寄付をするという選択肢があります。多くの団体が、食料支援、医療支援、教育支援など、さまざまな形で貧困削減に取り組んでいます。少額からでも寄付できるプログラムもたくさんありますし、継続的な支援は団体の安定した活動につながります。寄付先を選ぶ際は、その団体の活動内容や透明性をよく確認することが大切です。

3. フェアトレード商品を選ぶ

普段のお買い物で、フェアトレード認証のついた商品を選んでみるのはどうでしょうか。フェアトレードとは、開発途上国の生産者に対して、より公正な価格で継続的に製品を買い取ることで、彼らの生活改善や自立を支援する貿易の仕組みです。コーヒー、紅茶、チョコレート、バナナ、衣料品など、フェアトレード商品は意外と身近にあります。これらを選ぶことは、生産者の持続可能な生活を支え、貧困削減に間接的に貢献することになります。

4. 地元の活動に参加する・ボランティアをする

もしあなたの地域で、子どもの貧困対策や生活困窮者支援を行っている団体があれば、ボランティアとして参加してみるのも素晴らしいアクションです。学習支援、フードバンクの運営補助、イベントの手伝いなど、さまざまな関わり方があります。直接的な支援活動に参加することで、問題の現状をより深く理解し、やりがいを感じることもできるでしょう。

5. 声を上げる・情報を発信する

貧困問題について学んだことや感じたことを、SNSなどで発信してみましょう。あなたの発信が、他の誰かの関心を呼ぶきっかけになるかもしれません。また、貧困削減に取り組む政策や企業の活動を支持する声を上げることも重要です。世論が高まることで、より大きな変化を生み出す力になります。

6. エシカルな消費を心がける

「エシカル消費」とは、人や社会、環境に配慮した消費行動のことです。例えば、環境負荷の少ない製品を選んだり、児童労働や不当な労働条件で作られていない製品を選んだりすることも、広い意味で貧困問題の解決につながります。自分が何にお金を使うのか、その背景に思いを馳せてみることが大切です。

これらのアクションは、決して難しいことばかりではありません。自分にできること、興味のあることから始めてみませんか?一人ひとりの小さな選択や行動が、確実に「誰一人取り残さない」社会の実現へとつながっていくはずです。

まとめ:小さな一歩が、貧困のない未来を創る

今回は、SDGsの目標1「貧困をなくそう」について、その意味や世界の現状、そして私たちにできることまで、幅広く掘り下げてきました。いかがでしたでしょうか?

「貧困」という言葉は、時に重く、解決が難しい問題のように感じられるかもしれません。しかし、SDGsが具体的なターゲットを掲げ、世界中の国や組織、そして市民一人ひとりが行動を起こすことで、着実に変化は生まれています。

この記事を通して、貧困問題が決して他人事ではなく、私たちの生活や選択と深く結びついていることを少しでも感じていただけたなら幸いです。そして、「自分にも何かできることがあるかもしれない」と思っていただけたら、これ以上に嬉しいことはありません。

フェアトレードの商品を一つ選んでみる。貧困に関する記事を読んでみる。信頼できる団体に少額でも寄付をしてみる。どんなに小さな一歩でも、その行動は必ず誰かの支えとなり、より良い未来への希望となります。

SDGsの達成期限である2030年まで、残された時間は決して多くありません。しかし、諦めずに、私たち一人ひとりが当事者意識を持ち、できることから行動を続けることが、貧困のない、そして誰もが人間らしく生きられる社会の実現につながると信じています。

この記事が、あなたにとって貧困問題について考え、行動を始めるきっかけとなれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました!

SDGsってなんだろう?~未来への羅針盤、基本のキ~

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