「SDGs」という言葉をよく耳にするようになりましたね。その中でも、私たちの毎日の生活に深く関わっているのが、目標12「つくる責任、つかう責任」です。
これは、一言でいうと「地球の資源を使いすぎず、環境にやさしい方法でものづくり(生産)を行い、作られたものを大切に使い(消費)、ごみを減らしていこう」という目標です。
これまで世界は、たくさんのものを作り、使い、そして捨てる「大量生産・大量消費」を続けて経済を成長させてきました。しかし、その結果、地球の資源がどんどん減ったり、大量のごみで環境が汚染されたりといった問題が深刻になっています。
このままでは、未来の世代が必要な資源を使えなくなってしまうかもしれません。そうならないために、生産者も消費者も、地球環境や人々の暮らしに配慮した行動に変えていく必要があります。
この目標は、企業などの「つくる側」と、私たち消費者の「つかう側」の双方が責任を持つことを求めているのが大きな特徴。誰か一方が頑張るのではなく、みんなで協力して、持続可能な社会を目指していくための大切な指針なのです。
なぜSDGs目標12が必要?世界と日本の現状
では、なぜ今「つくる責任、つかう責任」がこれほど重要視されているのでしょうか。世界と日本の現状を見ていきましょう。
世界が直面する課題:大量生産・大量消費の現実
世界の人口は増え続けており、それに伴って、より多くの資源やエネルギーが必要とされています。国連によると、世界人口が2050年までに96億人に達した場合、現在のライフスタイルを維持するためには、地球が3つ必要になると予測されているのです。
特に、天然資源の消費量は驚くべきペースで増えています。限りある資源をこのまま使い続ければ、いずれ枯渇してしまうことは明らかでしょう。
また、生産から消費までの過程で捨てられてしまう「食品ロス」も深刻な問題。世界では、人間が消費するために生産された食料のうち、約3分の1が失われたり、捨てられたりしています。これは、飢餓に苦しむ人々がいる一方で、大量の食料が無駄になっているという悲しい現実を示しています。
さらに、プラスチックごみによる海洋汚染など、廃棄物が地球環境に与える影響も無視できません。これらの問題は、私たちの便利な生活の裏側で起きていることなのです。
日本の現状:食品ロスやごみの課題
世界の問題は、もちろん日本にとっても他人事ではありません。日本は食料の多くを輸入に頼りながら、世界トップクラスの食品ロス大国の一つです。
農林水産省の推計によると、2022年度の日本の食品ロス量は年間523万トン。これは、国民一人ひとりが毎日お茶碗一杯分(約114g)のご飯を捨てているのと同じ量になります。まだ食べられるのに捨てられている食べ物が、こんなにもあると考えると、非常にもったいないですよね。
また、ごみの問題も深刻です。特にプラスチックごみは、便利な一方で環境への負荷が大きいため、世界的な課題となっています。日本は、一人当たりのプラスチック容器包装の廃棄量が世界で2番目に多いというデータもあり、3R(リデュース・リユース・リサイクル)の推進が急務です。
このように、私たちの便利な暮らしは、知らず知らずのうちに地球に大きな負担をかけています。この現状を変えるために、目標12への取り組みが不可欠なのです。
SDGs目標12の具体的なターゲット(達成目標)
SDGs目標12には、より具体的な11個のターゲット(達成目標)が設定されています。すべてを紹介すると難しくなってしまうので、特に私たちの生活に関わりの深いものを3つピックアップして解説します。
- ターゲット12.3「2030年までに、お店や消費者の段階で世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半分に減らす」これは、先ほども触れた「食品ロス」を減らすための目標です。スーパーなどの小売店での売れ残りや、家庭での食べ残し・期限切れによる廃棄を、世界全体で半分にしようというもの。買いすぎない、作った料理は食べきるなど、日々のちょっとした心がけが貢献につながります。
- ターゲット12.5「2030年までに、ごみの発生を大幅に減らす」ごみを減らすための取り組み、いわゆる「3R」を推進する目標です。
- リデュース(Reduce): ごみの発生を減らす(例:マイバッグやマイボトルを使う)
- リユース(Reuse): 繰り返し使う(例:詰め替え製品を選ぶ、リサイクルショップを利用する)
- リサイクル(Recycle): 資源として再利用する(例:ごみを正しく分別する)この3つを意識して行動することが、ごみの削減に直結します。
- ターゲット12.8「2030年までに、人々があらゆる場所で、持続可能な開発や自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする」これは、私たち一人ひとりが「サステナブル(持続可能)な暮らし」とは何かを理解し、意識して行動できるようになろう、という目標です。環境に配慮したサステナブルな商品を選ぶ「エシカル消費」なども、この目標を達成するための大切なアクションの一つと言えます。
私たちができること|つくる責任・つかう責任を果たすアクション
「目標は分かったけれど、具体的に何をすればいいの?」と思いますよね。ここでは、私たち消費者にできることと、企業に求められることを具体的に見ていきましょう。
消費者としてできること(つかう責任)
私たちの日々の選択が、未来を変える力になります。難しく考えすぎず、できることから始めてみませんか。
- 買い物の仕方を見直す
- 本当に必要か考えてから買う。
- マイバッグ、マイボトルを持参し、過剰な包装は断る。
- 地元の産品や旬の食材を選ぶ(フードマイレージの削減)。
- すぐに使う食材は、スーパーの棚の手前にある販売期限が近いものから選ぶ「てまえどり」を実践する。
- 環境や社会に配慮した認証マーク(エコマーク、FSC認証、レインフォレスト・アライアンス認証など)のある商品を選ぶ。
- 家での過ごし方を見直す
- 食材を無駄なく使い切る工夫をする。
- 食べ残しをしない。
- ごみは正しく分別し、リサイクルを徹底する。
- 一つのものを修理しながら長く大切に使う。
- 節電・節水を心がける。
これらの行動は、ごみを減らすだけでなく、節約にもつながるメリットがあります。楽しみながら取り組むのが、長続きのコツです。
企業ができること(つくる責任)
企業には、製品の企画・製造から廃棄に至るまで、すべての段階で環境や社会への影響を減らす責任があります。
- サステナブルな製品開発
- リサイクル素材を積極的に利用する。
- 製品の寿命を延ばす設計にする。
- 過剰な包装をやめ、環境負荷の少ない素材に変える。
- 製品が使用後にリサイクルされやすいデザインにする。
- サプライチェーンの透明化
- 原材料の調達先で、違法な労働や環境破壊がないかを確認し、管理する。
- 生産から販売までの過程で、CO2排出量や水の使用量を削減する。
- 情報開示と啓発
- 製品がどのように作られているか、環境にどのような配慮がされているかを消費者に分かりやすく伝える。
- 消費者に対し、製品の正しい使い方やリサイクル方法を啓発する。
最近では、こうした取り組みを積極的に行う企業が増えてきています。私たちがそうした企業の商品を選ぶことが、社会全体を変える後押しになります。
【比較表】従来の消費とサステナブルな消費の違い
目標12が目指す社会をより具体的にイメージするために、これまでの経済の仕組みと、これからのあるべき姿を比較してみましょう。
項目 | 従来の経済(リニアエコノミー) | これからの経済(サーキュラーエコノミー) |
---|---|---|
考え方 | 作って、使って、捨てる(一方通行) | 資源を循環させ、長く使い続ける(円を描く) |
資源 | 地球から採掘し、使い続ける | できるだけ再生可能な資源を使い、廃棄物も資源と捉える |
製品 | 安く大量に作り、買い替えを促す | 修理しやすく、長く使えるように設計する |
消費行動 | 所有することに価値を置く | 共有(シェアリング)やサービス利用も選択肢に入れる |
廃棄物 | 「ごみ」として埋め立て・焼却 | 「資源」としてリサイクル・再利用し、ごみを最小限にする |
目指す姿 | 経済成長の追求 | 環境保全と経済成長の両立(持続可能な社会) |
このように、これからは「捨てる」ことを前提としない「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」への転換が求められています。私たちの消費行動も、この新しい経済の仕組みに合わせたものへとアップデートしていく必要があるのです。
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まとめ:未来のために「つくる責任、つかう責任」を果たそう
SDGs目標12「つくる責任、つかう責任」は、地球の限りある資源を守り、美しい環境を未来の世代に引き継ぐために欠かせない目標です。
大量生産・大量消費の時代から、資源を大切に循環させる社会へと移行していくためには、企業努力はもちろん、私たち一人ひとりの意識と行動の変化が不可欠です。
「自分一人がやっても変わらない」と感じるかもしれません。しかし、その小さな一歩が集まれば、社会を動かす大きな力になります。
まずは、マイバッグを持つ、食べ残しをしない、ごみをしっかり分別するなど、今日からできることから始めてみませんか。未来を選ぶのは、今の私たちです。
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