私たちの生活に欠かせない、青く美しい海。しかし今、その豊かさがさまざまな問題によって脅かされています。
この記事では、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」について、海の現状や課題、そして私たちにできることを分かりやすく解説します。未来の世代にもこの美しい海を残すために、何ができるのか一緒に考えていきましょう。
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」とは?
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」は、「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」ことを目指す、世界共通のゴールです。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、要するに「海の恵みをこれからもずっと受けられるように、海や海の生き物を大切にしながら、上手に利用していこう」という目標になります。
地球の表面の約7割を占める海は、私たちが呼吸する酸素の約半分を作り出し、気候を安定させる大切な役割を担っています。また、多くの人々にとって貴重な食料源であり、暮らしを支える存在です。
しかし、私たちの活動が原因で、海の環境は悪化の一途をたどっています。この目標は、そんな海からのSOSに応え、豊かな海を取り戻すために設定されました。
海が直面している危機的状況とは?海洋汚染や資源枯渇の問題点
今の海は、残念ながら多くの問題を抱えています。ここでは、特に深刻な3つの課題について見ていきましょう。
海洋プラスチックごみ問題
世界では、毎年少なくとも1,100万トンものプラスチックが海に流れ込んでいると言われています。このままでは、2040年までにごみの量は約3倍に増えると予測されている状況です。
これらのプラスチックごみは、ウミガメや海鳥などの生き物が誤って食べてしまい、命を落とす原因となります。さらに、紫外線や波の力で細かく砕かれた「マイクロプラスチック」は、魚の体内から検出されており、最終的に私たちの食卓にのぼる可能性も指摘されています。生態系だけでなく、私たちの健康にも影響を及ぼしかねない深刻な問題なのです。
富栄養化による赤潮・貧酸素水塊
家庭から出る生活排水や、農地で使われる肥料などが十分に処理されないまま海に流れ込むと、「富栄養化」という現象が起こります。これは、海中の栄養分(窒素やリン)が増えすぎる状態のこと。
富栄養化が進むと、特定のプランクトンが異常発生して「赤潮」が起こり、魚が大量死することがあります。また、プランクトンの死骸が分解される際に大量の酸素が消費され、多くの生き物が生息できない「貧酸素水塊」が発生する原因にもなります。日本の閉鎖的な海域(東京湾や伊勢湾、大阪湾など)でも、この問題はたびたび観測されています。
水産資源の過剰な漁獲
お寿司や焼き魚など、私たちの食卓に欠かせない水産資源も危機に瀕しています。国連食糧農業機関(FAO)の報告によると、世界の水産資源のうち、持続可能なレベルで漁獲されている魚の割合は年々減少しており、2019年には64.6%まで落ち込みました。
つまり、世界の3分の1以上の魚が、獲りすぎ(過剰漁獲)の状態にあるということです。このままでは、将来「食べられる魚がいなくなる」という事態も起こりかねません。日本の食卓でおなじみのクロマグロやウナギなども、絶滅が心配される魚種としてリストアップされています。
私たちの暮らしと海の関係|毎日の生活でできること
「海の問題は壮大すぎて、自分にできることなんてないかも…」と感じるかもしれません。しかし、そんなことはありません。日々の暮らしの中の小さな選択が、未来の海を守る大きな力になります。
ごみの分別とポイ捨て防止
最も基本的で、そして最も重要なアクションです。街で捨てられたごみは、雨や風によって川に運ばれ、やがて海へとたどり着きます。プラスチックごみをはじめ、ごみは必ず決められた場所に、ルールを守って捨てましょう。特に、外出先でのごみの管理は意識したいところ。マイバッグやマイボトルを持ち歩くことも、ごみを減らす有効な手段となります。
環境に配慮した製品を選ぶ
買い物の際に、少しだけ商品の背景に目を向けてみませんか。例えば、水産物を選ぶときには「海のエコラベル」と呼ばれる認証マークが付いた商品を探してみましょう。代表的なものに「MSC認証」と「ASC認証」があります。
認証マーク | 対象 | 意味 |
---|---|---|
MSC認証 (海のエコラベル) | 天然の水産物 | 水産資源や海洋環境に配慮し、適切に管理された「持続可能な漁業」で獲られた水産物の証。 |
ASC認証 | 養殖の水産物 | 環境への負担を最小限にし、地域社会や人権にも配慮した「責任ある養殖」で育てられた水産物の証。 |
これらの認証マークは、持続可能な水産業を応援する意思表示になります。スーパーなどで見かけたら、ぜひ手に取ってみてください。
海の現状を知り、周りの人と話す
まずは海が置かれている状況に関心を持つことが第一歩です。この記事で知ったことを、家族や友人に話してみるだけでも立派なアクションと言えるでしょう。海の問題について考える輪が広がれば、社会全体で取り組む大きなムーブメントにつながっていきます。地域のビーチクリーン活動などに参加して、実際に海の現状を肌で感じてみるのもおすすめです。
SDGs目標14達成に貢献する企業の先進的な取り組み事例
個人だけでなく、多くの企業も海の豊かさを守るために動き出しています。ここでは、具体的な企業の取り組みをいくつか紹介しましょう。
ある大手飲料メーカーでは、使用済みペットボトルを100%リサイクルして新しいペットボトルに再生する「ボトルtoボトル」の取り組みを推進しています。これにより、新たな石油資源の使用を抑え、CO2排出量も削減できるのです。
また、ある水産会社では、AI技術を活用して魚の量を予測し、過剰な漁獲を防ぐシステムを開発。漁業の持続可能性を高める挑戦を続けています。さらに、アパレル業界でも、海岸で回収されたプラスチックごみをアップサイクル(価値の高いものに作り替えること)し、スニーカーやバッグの素材として活用する動きが広がっています。
このように、さまざまな企業が自社の技術やアイデアを活かして、海洋問題の解決に貢献しています。私たちがこうした企業の商品やサービスを積極的に選ぶことも、海を守る行動の一つになります。
SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」とは?森林・生物多様性の保全と私たちにできること
まとめ
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」は、美しい海とそこに生きる多様な生命を未来につなぐための、私たち全員に関わる大切な目標です。
海洋プラスチック問題、富栄養化、水産資源の枯渇など、海が抱える課題は深刻ですが、決して手遅れではありません。
ごみのポイ捨てをやめる、環境に配慮した商品を選ぶといった一人ひとりの小さな行動が、大きな変化を生み出す原動力となります。
この記事をきっかけに、海との関わり方を見つめ直し、自分にできることから始めてみませんか。
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